歯科タウン倶楽部通信

チェアタイム短縮による診療報酬アップは無謀

今回は、相模原市で開業のT歯科医院様にインタビューを敢行!
チェアタイムの設定による失敗についてお聞きしました!

医院を構えるということでモチベーションが高まっている先生は多いことでしょう。また、患者さんにご満足いただける治療を行いたいという熱い想いをお持ちの先生もたくさんいらっしゃると思います。その熱い気持ちは大事にしてください。

「情熱<金儲け」になってしまったら、
私のように落とし穴にはまってしまうかもしれませんから……。

開業当時の私は、医療人としてのプライドと患者さんへの責任感を強く持っていました。できるだけカウンセリングに時間を取って患者さんと話そう患者さんが何に悩んでいて、どういう治療を受けたいのか親身になって考えよう、と。

しかしそんな熱い想いは、開業後数年で徐々に薄れていきました。保険診療は単価が低いため、開業当初に立てた収支計画とズレが生まれ、「おかしいな」「思ったより儲からないな」と感じるようになっていたのです。

悩みはじめてから数ヶ月後……
それまで1時間近く取っていた患者さん一人当たりのチェアタイムを1/4の15分に短縮するという決断を下しました。で、どうなったか。

確かに利益率が上がりました。……正確にいうと一時的には。長い目で見るとリピートしてくださる患者さんが減っていき、かかりつけとして来院してくれていた患者さんまで離れていったのです……。

患者さんがいなければ勉強もできないし、やりたい治療もできない。当然儲からない。時間を短縮して数をこなすことに執着していた私の姿は、患者さんの目にどう映ったんだろうか。そう考えると、私は今でも胸が痛みます。経営が厳しくても、患者さんともっと向き合うべきだったと。

改心した私は、患者さんの悩みに耳を傾けよう
治療内容や検査結果についてしっかり伝えよう
二人三脚の治療を行おう、そう考えました。

考えた結果、開業当初のチェアタイムを1時間取る医院体制に戻しました。しかし、それだけで患者さんは戻ってきてくれるほど甘いものではありませんでした。

「今度は治療時間が長くなった。一体どういうこと?」
「忙しいから早くして」
といったクレームに近いお言葉を患者さんからいただきました。今度は短いチェアタイムに魅力を感じていた患者さんが離れていったのです。ただ今度は、私は信念を曲げませんでした。必ず患者さんは戻ってきてくれると信じて。それから半年以上の間、厳しい医院経営ではありましたが「チェアタイム1時間」を継続したのです。

結果、時間はかかってしまいましたが患者さんのリピート率は上がり、昔離れていった患者さんも戻ってきてくれたんです。嬉しかったですね。自分を信じて、患者さんを信じてよかったなと。

現在の歯科業界は昔とは違い、大変厳しいと思います。開業当初は我慢の時、種まきの時だと考えて乗り切ることが大切です。経営が苦しくても一所懸命患者さんと接していれば、必ずその想いは伝わり、付いてきてくれます。熱い志、医療人としてのプライドはどうか持ち続けてください。あなたの歯科医師としての大成をお祈り申し上げます。

(インタビューアー:石井)