訪問歯科診療を始めるには?

訪問歯科診療を始めたいと思っている先生へ 訪問歯科診療を始めるには?立ち上げ手順・届出・機材・集患を徹底解説

  • 経営改善

投稿日:2026/02/06

最終更新日:2026/02/06

訪問歯科診療を始めるには?立ち上げ手順・届出・機材・集患を徹底解説

「開業当初から通ってくれていた患者様が、高齢で通院できなくなってしまった」
「訪問診療の必要性は感じているが、何から手をつけていいか分からない」

地域のかかりつけ医として長年診療を続けていると、このような悩みに直面することが増えていないでしょうか。
超高齢社会の日本において、外来診療だけではカバーしきれないニーズが急増しています。

この記事では、これから訪問歯科診療(在宅歯科医療)への参入を検討している歯科医院に向けて、立ち上げの意義から具体的な手続き、必要な機材、集患ノウハウまでをロードマップ形式で解説します。

1. なぜ今、訪問歯科診療なのか?その意義と背景

訪問歯科を始めるにあたり、最も重要なのは「なぜやるのか」という理由です。収益面だけでなく、先生ご自身の診療哲学に関わる部分が、事業を継続させる大きな推進力となります。

既存の外来患者様を守る「責任」

多くの医院で、外来患者様の高齢化が進んでいます。
信頼関係を築いてきた患者様が、通院困難になった途端に口腔ケアが途絶え、急速に状態が悪化してしまうことは、歯科医師として非常に心苦しいものです。

「来られなくなったら終わり」ではなく、「来られなくなったら、こちらから行く」
これまでの信頼関係を活かし、患者様の人生に最期まで寄り添うこと。これこそが訪問歯科を始める最大の意義であり、スタートアップ時の強みにもなります。

医院経営の安定化(ストック型ビジネス)

歯科医院の数はコンビニよりも多いと言われ、外来患者の獲得競争は激化しています。一方で、在宅医療の需要は2025年、2040年に向けて右肩上がりです。
待合室で待つ「フロー型」の外来に加え、計画的に訪問する「ストック型」の訪問診療を持つことは、医院経営における強力なリスクヘッジとなります。

2. 訪問歯科を始めるための要件・届出・手続き

熱意だけで訪問歯科は始められません。まずは法的なルールと施設基準をクリアする必要があります。

「半径16km」の絶対ルール

訪問診療が可能なエリアは、医療法により「歯科医院から半径16km以内」と定められています。これを超えての診療は、原則として保険請求が認められません(絶対的な理由がある場合を除く)。
まずは地図上で自院を中心とした16kmの円を描き、商圏エリアを正確に把握しましょう。

厚生局への届出(施設基準)

継続的な訪問診療を行い、適切な診療報酬を算定するためには、地方厚生局への届出が必要です。

  • 歯科訪問診療料の届出: 訪問診療を開始する旨の基本的な届出です。
  • 在宅療養支援歯科診療所(歯援診): 1号・2号・3号の区分があり、多職種連携や実績によって点数が大きく変わります。

特に「歯援診」の取得は経営的なメリットが大きいため、最初から要件クリア(地域連携の実績作りなど)を目指して準備を進めることをおすすめします。

3. 必要な機材と設備(ポータブルユニット等)

「訪問先でも外来と同レベルの治療」を提供するため、近年は機材の小型化・高性能化が進んでいます。

導入必須の「三種の神器」

訪問診療を本格的に行うなら、以下の3つは必須です。

  1. ポータブルユニット: 切削・吸引・注水機能がトランク1つに収まったもの。
  2. ポータブルレントゲン: 訪問先での撮影に必須。デジタルセンサーと組み合わせて使用します。
  3. 訪問診療車: 住宅街の狭い路地でも入りやすい軽自動車が主流です。

差別化につながる「嚥下内視鏡(VE)」

食支援や嚥下機能検査を行う場合、嚥下内視鏡(VE)が大きな武器になります。
初期投資は数百万円単位になりますが、「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」などが活用できるケースもあるため、導入のタイミングを見極めることも大切です。

4. 院内体制の構築(スタッフ・オペレーション)

機材以上に重要なのが「人」と「仕組み」です。院長一人ですべてを背負い込むのは現実的ではありません。

3人1組のチーム体制が理想

訪問診療は基本的に以下の3名体制で行うのが効率的です。

  • 歯科医師: 治療・診断に集中。
  • 歯科衛生士: 口腔ケア、患者様・ご家族とのコミュニケーション。
  • コーディネーター(兼ドライバー): 運転、機材運搬、スケジュール調整、集金、施設連絡など。

特にコーディネーターの存在が事業の成否を分けます。先生が診療以外の雑務(運転や電話対応、集金)に追われると疲弊してしまい、事業継続が困難になります。専任スタッフを配置するか、アウトソーシングを活用するなど、役割分担を明確にしましょう。

スケジュール管理の徹底

「毎週〇曜日の午後」のように訪問専用枠を設けるか、外来の昼休みに行くか。移動時間を含めた現実的なスケジュール管理が必要です。無理な計画は、外来診療への悪影響を招きます。

5. 集患・営業(ケアマネジャー連携)

ここが最も外来と異なる点です。看板を出して待っていても、訪問歯科の患者様は増えません。

まずは「既存患者様」へのアナウンスから

バックボーンで触れた通り、まずは通院が途絶えてしまった既存の患者様や、そのご家族へのアプローチから始めましょう。
「通うのが大変になっていませんか?ご自宅へ伺うこともできますよ」という声かけや院内掲示、ニュースレターの送付が最初の一歩です。知らない先生よりも、馴染みの先生に来てほしいと願う患者様は多いはずです。

ケアマネジャーへのアプローチ

新規の患者様を獲得するには、介護のキーマンであるケアマネジャー(介護支援専門員)との連携が不可欠です。
地域の「居宅介護支援事業所」や「地域包括支援センター」を訪問し、自院の強みを伝えます。

【伝えるべきポイント】

  • 「入れ歯の調整が得意です」
  • 「急患や痛みの訴えにすぐ対応します」
  • 「食支援(嚥下)にも対応可能です」

専門用語ではなく、介護職の方にメリットが伝わりやすいパンフレット等のツールを準備しましょう。

まとめ:地域のかかりつけ医としての一歩を

訪問歯科診療の立ち上げは、単に新しいメニューを増やすことではありません。「待ちの医療」から「出向く医療」への意識改革が必要です。

しかし、長年診てきた患者様を最期まで診ることができる喜びは、歯科医師として何物にも代えがたいものです。まずは、通院が難しくなりそうな患者様に「もし来られなくなったら、往診もできますからね」と声をかけるところから始めてみませんか?

訪問歯科の立ち上げ・運営にお悩みの先生へ

「書類手続きが複雑で分からない」「ケアマネジャーへの営業方法に不安がある」
そのようなお悩みをお持ちの先生は、ぜひ当社へご相談ください。
当社コンサルタントがお悩みをお伺いし、
歯科医院訪問に特化したパートナーをご紹介。
訪問歯科の立ち上げから運営効率化、集患サポートまで、実例を交えてアドバイスいたします。

戸川侑英の画像

書いた人

戸川 侑英 (webコンサルタント)

西日本エリア担当。元製薬会社MR。
医療の知識を活用したご提案に自信あり。趣味は創作料理。 

PAGETOPページトップへ