歯科タウン倶楽部通信

忘れていたデンタルファミリーの概念

開業5年を迎え、新患は1ヶ月あたり4人程度。
新患は獲得できているので、次はリコール率を高めよう。

今後、医院を大きくするための一手を打つべく、私は患者さんのカルテを見返し、どの診療のリコール率を伸ばしていくべきかを考えました。過去5年間のカルテを整理すると、補綴治療後に来院される患者さんが少ないことに気づきました。

そこで私は、大学時代の恩師に相談をすることにしました。ひと通り話し終えると、恩師は意外なことを語りました。

恩師「技工所とはうまくいってる?」

「技工所ですか?はあ、別に指示どおりに作ってもらっているので問題はないと思っているんですけど」

恩師「印象とって形成を送ったときにアドバイスとか受けたことある?もしないなら一度聞いてみたほうがいいかもね」

「僕の形成に問題があるってことですか・・・? 一度技工所Aから指摘を受けたことがあったんですけど、関係がギクシャクしたので契約をやめて今は指示の通りに作ってくれる技工所Bに外注しています」

恩師「もしかして技工所に下請けのようなイメージを持っていない? だとしたら、それは間違っているよ」

「医院の数が飽和し競争が激化してからは、院内からラボと技工士が消え、外注するのが当たり前になった。するとデンタルファミリーの概念は薄れ、いっしょに良い技工物を作っていくという考えもなくなった。技工所は歯科医院から発注してもらわないと食えない。結果的に、技工所は医院の下請けのようになってしまった」

「知り合いの技工士から聞いた話では、立場が弱いから歯科医師が作った形成の精度が悪くても指摘はしないらしい。現に君が取引を辞めたように、打ち切られたら終わりだからね。これじゃあデンタルファミリーではないよね」

「君の補綴物の精度は知らないけど、もしかしたら技工所に遠慮させていることが補綴物が伸びない原因かもしれないよね」

「患者さんのことを考えたら、やはり技工士のアドバイスは聞くべきだと思うのだけど君はどう思う?」

デンタルファミリーの概念を忘れていたなと、私は思いました。今思えば技工所Aの指摘は、自分のために言ってくれていたことだったはず。そう思うとなんだか、変なプライドを持って技工所Aを下に見ていた自分が恥ずかしくなりました。なぜあのときに聞く耳を持てなかったのだろうと。

イメージ

それから私はデンタルファミリーの概念のもと、契約していた技工所Bとの付き合いをやめて契約を打ち切った技工所Aに赴き、もう一度取引してもらえるようお願いしました。

正直断られると思っていたのですが、今後は対等な関係で付き合っていきたいと伝えると 技工所Aは再び契約をしてくれることになったのです。当時よりもよく話し、相談をするようにもなり、技工士からも指摘やアドバイスをしてくれるようになっていきました。

 

アドバイスを治療に反映すると印象の精度は徐々に上がり、補綴物の仕上がりも良くなっていきました。デンタルファミリーの概念にもとづき、衛生士や助手とのコミュニケーションのあり方も見直して結果的に患者さんにも喜ばれるようになりました。

デンタルファミリーの考え方は現在は技工所のものとなっていて、ドクターでこの考え方を持っている方は少ないようです。患者さんに良い治療を提供するためにも、デンタルファミリーの概念を見直されてみてはいかがでしょうか?

(インタビューアー:石井)