歯科タウン倶楽部通信

労使間トラブル防止の布石『労働契約書』

「なんだこりゃあ……!」

父親が開業した歯科医院を継ぎ、初めて売上や粗利を知ったときに私は愕然としました。

「経営は俺がやる」という父の意志を尊重し、父が病気になるまではずっと経営は任せっきりでしたが、新しい会計士にセカンドオピニオンを受けたところ、売上は決して低くないにもかかわらず粗利がとても低いことがわかったのです。

経営を独学で勉強していた私でも、数字を見たときにおかしいと思うようなものでした。こんな状態ならもっと早く、私に経営権を譲って欲しかったと思いましたが、病床の父を責めることはできません。幸い、診療は私がメインで担当していたため、治療の質が落ちるような心配はなく課題は経営の見直しに絞られました。

そして、たまたまこの時期にスタディグループ同期のドクターと同期会で会ったときに、歯科医院やクリニックに強い社労士を紹介してもらうことになりました。

社労士「売上が1億あってこのスタッフの人数で回しているのに手元にお金が残らないのはおかしいですね。ちなみに、スタッフの方の人件費が全体的に高めですね……。どういうことですか?」

T院長「やはり、そうなんですか……実はうちの医院は家族経営で父の兄弟やいとこの給与が高すぎるような気がしていたんです」

社労士「家族経営の歯科医院で多いのですが、もしかしたらお父様がお付き合いされている会計士はそれを知りつつも目をつむっているのかもしれませんね」

T院長「なるほど。でも、いきなり給与を下げるわけにも……。どうすればいいんでしょうか?」

社労士「労働契約書は作成していますか?」

T院長「おそらく、父は作成していなかったと思います。賃金や就業時間を規定している書類ですよね?」

社労士「ええ、そうです。働く上での細かいルールを記載したものなのでそれがないと昇給や残業を巡ってトラブルが起きたり、余計な人件費がかかったりするので、必ずスタッフさんには渡しておかないといけません。長時間の残業を強いられた衛生士が医院を訴えるようなケースもありますからね。一般的な会社であれば間違いなく作るものです」

T院長「なるほど……では労働契約書の作成をお願いできますか?」

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後日、社労士に労働契約書を作成してもらい、親族を含めてスタッフ全員と契約を交わしました。20万円ほどかかりましたが、今後経営が悪化していく恐れがあることや一時的に給与を落として将来的に以前の給与に戻すことなどを伝えることでなんとか理解を得ることができました。社労士いわく、歯科医院の多くは社労士を雇わず、また労働契約書を作っていないということでした。

しかし、人件費がネックになって医院の粗利が低い状態では最新の治療設備の導入や内装のリニューアルなどもできません。今ではきちんと労働契約書を交わしたことでトラブルに怯えることなく、また設備の導入のための貯金をするなど医院を大きくするための投資ができる余裕が生まれました。

一旦、上げてしまった給与を減額するというのは院長の立場からしてもとても辛いものでしたが、今では正しい選択をしたと思っています。

歯科医院は会社と同じではありませんが、健全な経営やトラブル防止を考えると専属の社労士は不要でも、労働契約書くらいは作成したほうが良いのかもしれません。作っていない先生は、ぜひ参考にしてみてください。

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(インタビューアー:石井)