Vol.54:診療理念を貫くか、組織と足並みを揃えるか……
- 激白!歯科医院の落とし穴
投稿日:2018/10/21
最終更新日:2019/11/11
投稿日:2018/10/21
最終更新日:2019/11/11
診療理念に共感できる?できない? 医療法人ならではの次のようなトラブルが、あなたの医院でも起こるかもしれません。
3つの分院を持つ医療法人を束ねるH理事長は、1週間前に医療法人グループの方向性を確認しあうための勉強会を開催しました。そこには3ヶ月前に新しく迎えたドクターも参加し、交流を深めました。
ところが……このドクターがこの後ちょっとしたトラブルを起こしてしまいます。H理事長は、予測していなかったまさかのできごとに驚き、長年の友人ドクターに愚痴をこぼしてしまいます。
H理事長「この間採用した新しいドクターが、初めてうちの法人の勉強会に参加してね。その場はとってもいい雰囲気だったのに、昨日突然口論になっちゃったんだ」
友人ドクター「何があったの?」
H理事長「そのドクターはうちの診療メニューに対してちょっと懐疑的でね。この間患者さんの診療中、他のスタッフ相手に、前にうちでやった治療を全面否定しちゃったんだよ……。『こんな治療はしちゃダメだ』って」
友人ドクター「それはよくないね……」
H理事長「そしたら、患者さんが不安になって『どうしてそんな治療を勧めたんですか?』って怒っちゃって」
友人ドクター「それは当然だね……
H理事長「これまでの経験から治療に対して意見や方針があるのはわかるんだけど、それは患者さんからのリクエストも多いから法人で導入している治療だったんだ。
うちでは常日頃から、他人は他人、自分は自分だから、他のドクターの治療を否定するのはよくないって言ってるんだけど、まさか患者さんの前でね」
友人ドクター「そのドクターには、伝わっていなかったんだ……。若い人なの?」
H理事長「いや、もう40代後半だね。やっぱりこれまでのキャリアがあるから信念も強いんだよね。頭や考え方が固くなってきているというか……」
友人ドクター「どんなに腕があっても、医療法人では柔軟に対応できないと一緒にやっていくのは難しいね」
H理事長「採用を他人任せにしちゃったのがよくなかったよ。説明不足だったからか、その治療に対してアンチな考えがあるとは見抜けなかったんだ」
友人ドクター「採用にも費用がかかるから、そういう齟齬はできれば最初に解消しておきたいね」
H理事長「そうだね。これからはもっと人材選びに積極的に参加していくよ」
H理事長は、早速ドクターにもう一度、医療法人の治療方針について説明しましたが、理解してもらえませんでした。
患者さんの前で、失言してしまったこのドクターは、結局、この歯科医院には合わないと辞めてしまいました。彼にもこれまでのキャリアに基づいた信念があり、医師としてよかれと思ってした発言だったわけですが、ドクターと医療法人双方とも「患者さんのために……」という想いが、不幸にも合わなかったことから起こってしまったトラブルでした。
採用の際には、まずコンセプトや治療方針に共感してもらえるかどうか。技術も大切ですが、それだけでいいのかどうか、しっかりと見極めることが大切です。